涼「そうだ、それでさ、もし良かったら...」







いきなり差し出された傘。
顔を真っ赤にしながら差し出されたその傘は、
黒くて男の子らしい傘。

その傘をそっと掴み、
喉のあたりまである言葉を叫んだ。






夏希「あの、ありがとうぎざいます!
私この後バイトあるので、借ります!」


涼「ちょ、待って!そうじゃなくて...」






彼の声を最後まで聞かぬまま、
私はその傘を広げて走り出した。






あの日、君は鞄を頭に乗せて帰ったんだっけ?
それって私のせいだったんだよね。

君は傘を二つも持ってたわけじゃなかった。
ホントは私に、一緒に帰ろうと言おうとしてくれていたのに、
私は知らないまま帰っちゃったんだ。






でもあの日君のおかげで...
バイトに遅刻する事はありませんでした。