学校の玄関。
容赦なく降る雨をじっと見つめ、
まだかまだかと貧乏ゆすりまでし始めた私。


このまま走って駅まで行っちゃう?
それとも、雨が止むまでずっと待つ?
うー、なんて唸りながら、私は雨を睨みつけた。






待っても待っても止まない雨。
私は意を決して、自分の鞄を頭に乗せた。

と、その時...












『ちょっと待って!』


夏希「へい!」






今頃考えてみれば、
へい!なんて返事、ちっとも可愛くなかったね。

いつか君にそれを聞いた時、
うん、たしかに。
なんて永遠に笑い続けてたっけ?






ってのはいいとして、
私は目を丸くしたまま後ろを振り返った。






『傘、無いんでしょ?』


夏希「ま、まあ」






見上げた顔。
そこには、白い肌に綺麗で整った顔。
目はくりくりしてて、昔飼っていた犬のようだ。

ん、先輩じゃん。
しかも、すごくイケメン。
同じクラスの女子が騒いでた、あの先輩だ。






夏希「藤井涼先輩ですよね?」


涼「知っててくれたんだ。嬉しいなっ」






人懐っこい笑みを浮かべた彼の頬、
そこから感じる優しさに、私は少し安心する。

普段先輩と話す事なんてない。
しかも、異性の相手だよ?
これで緊張しない人なんていないよね?






夏希「はい、一年の間じゃ人気ですよ?」


涼「なんか、恥ずかしいね。
そうだ、君は何ていうの?名前」


夏希「杉原夏希です!」






その後先輩は私の名前を呟くと、
何故だか私に、男らしい右手を差し出した。











story characters②

*藤井涼

高校3年生。人気者で、女子からはモテる。
何回告白されても彼女は作らないという変わった性格で、
夏希はこの先輩に_____