「な、んで、ここ、に太陽がい、るの?」


「帰って。帰ってよ。」


「ごめん。でも今日はお前に話があってきた。ちゃんと聞いてほしい。」


話って何。別れ話でしょ。どーせ。



傷つく話なら聞きたくない。


耳を塞いだ。でもそんな行動を気にせず太陽は話し始めた。



「俺さ、この前母ちゃんが死んだんだ。」


え。嘘でしょ。


私も一回会ったことがある。


太陽に連れられておばさんに紹介してもらって。すぐ仲良くなれた。


あの時はあんなに元気だったのに。

「あおいがクラスにハブられるようになって俺絶対一人にさせないって思ってた。でも、かあちゃんが倒れて入院して、病気だったんだ。かなり進行してて治らないって。だから毎日見舞いに行ってたんだ。正直きつかった。でも、お前と過ごす昼休みの時間はくつろげたんだ。」


「うん、」


「でも、母ちゃん全然よくなんなくて。もうすぐだろうって先生にも言われた。俺毎日毎日不安だったんだ。そんな気持ちのままあおとご飯食べたりしてたら、あおに甘えたくなる。自分の弱いとこみせたくなかった。だから、避けてた。それが、悪かったんだろうな。」


耳をふさぐのをやめてわたしは黙って太陽の話を聞いていた。


「そんな時、とうとう別れの時間が来たんだ。いつものように母ちゃんと話して、それでまた明日ねって。
そん時かあちゃんがいきなり

太陽、お母さんの子供でありがとう。
って言うから何言ってんだよ、まだ俺のために生きろよって言ったら、
ふふっそうね。また明日ねって。

なんとなく嫌な気がしたけど、帰ったんだ。



そしたらさ、朝学校に行く準備してると電話がかかってきて。


かあちゃんが死んだって。


俺、おれ、どうしたらいいかわかんなくて。


かあちゃんの葬式あったりだとか色々あったから学校にも行けなくて。連絡しなくて不安にさせてしまってごめんな。」


そう言って太陽は寂しげな笑顔で頭を撫でてくれた。



「でも太陽、あたしじゃなくてゆりかのことが好きなんでしょ。


あたし、みたの。放課後ゆりかを抱きしめてたところ。」



「そっか。あのな、ゆりかちゃんは、妹だった。」


「…え。」


「俺さ、かあちゃんと二人暮らしだったんだよね。おやが離婚して。それで俺がかあちゃんに妹が父親に引き取られたらしい。俺まだ3歳か4歳ぐらいの時でさ。妹がいるのは覚えてたんだけど、父親に会いに行ったこと一度もないから気づかなかった。


それで、かあちゃんが死んでから初めて知った。お前の友達のゆりかちゃんが俺の妹だって。」