「その手、離せよ」

「あ?」

「離せって言ってんだよ」

 瞬の声が低い。ものすごく怒ってる時の声…。

 瞬、なんで逃げないの?私がこの道を行こうって無理矢理連れてきたのに。こうなったのは、私のせいなのに…。

 勝手に涙がにじむ。泣いたって、仕方ないのに…。

「なんだよ。やんのか?」

 男の仲間が集まってくる。

 その間に初めに絡まれていた男の子がかばんを抱えて逃げていくのが視界の隅に映る。男たちはそれに気づいた様子はない。

「っ逃げんな!!」

 男の子に向かって思いっきり怒鳴る。男の子は飛び上がって走って行ってしまう。

 それを見た男の一部が反射的に追いかけようとする。

「ほっとけ。金より女の方が喜ぶだろ」

 私を捕える男の言葉で、追いかけおうとしていた人たちの足が止まる。

 この人たち、自分のために、カツアゲしてるんじゃないの…?それに、女の方が喜ぶって何…。

 首に回る腕に力が入る。

「こいつ、遊んでるようには見えねぇしな」

 にやりと笑う男に悪寒が体中を包んで体が勝手に震えた。