「金も持ってないし、俺ら行くわ」

 瞬に肩を持たれて押されていく。

 そのまま来た道を行こうとしたけど、別の手が肩を掴んで動けなくなる。

「何勝手に帰ろうとしちゃってるわけ?」

 首だけを後ろに向けて見ると、にやりと笑った男の人の顔が見えて嫌な汗が伝うのを感じる。

「金ねぇならよ。この女置いてけ」

「は?」

「聞こえねぇか?女、置いてけっつたんだよ」

 肩を掴む手に力がこもる。

 次の瞬間引き寄せられて抵抗も出来ずに瞬から離れてしまう。

「瞬っ」

「へぇ、シュンくんって言うのか」

 しまった、つい…。

 男の腕が首に回り、嫌な緊張感と圧迫感で息が詰まる。

 ど、どうしよう。瞬に逃げてもらって警察が来るのを待つ?でも、もしどこかに連れて行かれたら…。