「あ、か…加藤くん!!」

「あ?」

 加藤くんって誰…。

 前を歩く瞬が舌打ちしたような気がしたけど、それを確かめる前に瞬に引っ張られてカツアゲの現場の方を向いた瞬の背に隠された。

「か、加藤くん、この人たちにお金貸してあげて…。ぼ、僕今自由に使えるお金なくて…」

「へぇ、加藤くんって言うのか」

 リーダー格の男の人が瞬を捉える。

 瞬は何も言わないまま、ただ睨んでる。

 歩み寄ってきた男の人は目がぎらついて、近づくなと頭の中で警鐘が鳴る。

 自然と瞬の腕を掴むと、大丈夫と言うように視線を向けられたけど、その視線はすぐに男の人に向けられる。

「残念ながら、俺はそいつの友達じゃない」

「あ?」

「俺の名字は田中だ。加藤は、そいつの名字だよ」

「ああ?」

 う、嘘に嘘を重ねた…。

 でも、その嘘が必要な嘘だってことはわかる。

 こんな人たちに本名を教えたら、どうなるか…。

「な、か…加藤くん嘘つくなよ!!」

 すがるような目を向けてくる男の子。

 だけど、それを逸らす。自分の身も守れないのに、あの子のことまで助けられない。瞬も既に視線を逸らしていた。