「清志くん、秋奈に何も」

「言ってませんよ。すぐに寝ちまったし、事件のことは何も」

「ならいいけど」

 階段の下から声が聞こえてくる。

 何の話?事件って何…。

「…秋奈は、そんな弱い奴じゃないと思いますよ」

「ッ清志くんに何がわかるの!?あの子は…」

「おばさんこそ、秋奈のこと信じてあげなくてどうするんですか」

「…声を失うくらい、怖い思いをしたのよ。…思い出さないなら、その方がいいに決まってる!そんな恐怖を一生抱えさせるくらいなら、声が戻らなくたって、秋奈に思い出せないわ!」

 お母さんの強い言葉に思わずビクッて体が震える。

 みんなが嘘をつくのは、お母さんのせい?

 記憶が戻るのを怖がってるのは、お母さんなの…?

 なんで?なんで勝手に決めるの?

 声が出ないのも、思い出せないのも、私は、すごく嫌なのに…。