「俺は、こんなの望んでなかった!ずっと、ばあちゃんとじいちゃんと一緒にいたかった!学校行って、バカやって。そうやって、普通の生活がしたかった!こんな、手汚して、生きてくなんて、絶対に嫌だ!!」

「…」

 夏の言葉に恭也は黙り込む。

 だけど、夏の怒りは収まらないのか、恭也を見下ろしたまま、怒鳴り続ける。

「兄貴が壊したんだ!俺は、十分幸せだったのに!!やっと、ここから逃げ出せて、やっと、秋奈たちに普通の生活を教えてもらえたのに…。なんで壊しに来るんだよ!なんでほっといてくれないんだよ!!」

 多分、初めてだったんだと思う。

 夏が真正面からお兄さんに刃向ったのは…。

 こんなにも感情を爆発させて訴えかけたのは初めてだったんだと思う。

 恭也は明らかに動揺して、その目は揺らいでる。

 荒く息をする夏を見つめる目は、ただただ弟と心配する兄の目のような気もする。