夏の揺らいだ瞳が不意に強い力を持つ。
その直後、手すりに足をかけた夏は、リツキの手が届く前に身を投げ出した。
まっすぐに落ちてきた夏は、まるで猫のように着地して、まっすぐ私に駆け出してくる。
走りながらも拳を作り、それを突き出してくる。
体をひねり、夏の動きを避ける。
その瞬間、夏樹の拳は恭也の拳とぶつかり合う。
「兄貴」
「あ!?」
「…俺は、紫炎を抜ける!もう、あんたに縛られるのはごめんだ!!」
半歩身を引いた夏は、恭也の肩を蹴りつけ倒れさせる。
まっすぐに恭也を見下ろした夏の顔は恐怖に打ち勝った、強い顔でまっすぐと意思がその瞳に宿る。
「俺は、秋奈たちと行く!邪魔すんじゃねぇ!!」
信じられないというような目で夏を見上げる恭也に、なぜか戦意は感じなかった。
ただただ、夏を見上げる目は動揺の色に染まっていて、あんなにも恐怖した人だとは思えなかった。