いくらこの世界のことを分かっていないとは言っても、今自分の肩に突き刺さった注射の中身くらい分かる。
でも、男2人に拘束された体は動かない。
恭也って人が注射の押し子に手をかけたのを最後にきつく目を閉じる。
「やめろぉぉおおお!!!」
どうなってしまうかなんか想像したくない。
ただ、目の前の現実から目をそらすために視界を閉じた。
夏…ごめん。みんな、ごめん…。
覚悟を決め、身を固くした時、耳に飛び込んできたのはッバキという何かが砕けるような音。
「っな!?」
耳元で驚いたような声が聞こえてくる。
な、何!?驚いて目を開けるけど、眩しくて誰か分からない。
「女たらしがっ秋奈に触ってんじゃねぇよ!!!」
大音量の罵声が聞こえた直後、体を押さえつけていた力が遠のく。
ほぼ同時に、肩に刺さっていた注射器の違和感がなくなり、遠くでガラスの割れる音が聞こえた。
私を押さえつけていた天然パーマの人が隣で転がっている。
それを呆然と見ていると、腕を掴まれて引っ張り上げられる。