「いやぁぁああ!!」

「ぎゃははっ」

 1歩踏み込んだそこは、知らない世界。

 夏が隠したがった世界。

 どうしてか分からなかった。どうして言えなかったのか。

 …言えるわけなかったんだ。

 こんなにも歪んだ世界を、夏は…。

 うつろな目でパイプに口をつける人、腕に何か所も跡が残ってる人、暴れまわってる人…。

 たくさんの人がいる。なのに、誰も突然入って来た私に気づかない。

 なら、このまま総長のところまで行ってしまえばいい。

 息を極力抑えながら足を進める。

 みんなが言ってた。上の階は幹部以上の人たちの部屋だって。

 それがこの世界の通例であるというのなら、総長がいるのは2階。

 2階部分に見えるドアを見つめながら、そこへつながる唯一の階段へ突き進む。