「リツキ、寄越せ」

「え?何を?」

「とぼけんじゃねぇよ」

「…はは、怖い顔するなよ」

 なんの…話を…。

 視線を無理矢理上にあげると、リツキの手から注射器を奪い取る兄貴がいて…。

 …え?

 それを持った兄貴が近づいてくる。

 それがなんなのか、そんなの聞かなくても分かる。

 …嫌だ。…嫌だ!!

「怖がらなくても大丈夫ですよ。先輩」

「そーそ。お前我慢ばっかしてるみたいだし。楽になれよ」

 逃げようとしたところを小柄な奴と天パの奴に押さえつけられる。

 兄貴は表情が変わらないままにそれを近づけてくる。

 ダメだ。あれに踏み込んだら、今度こそ戻れなくなる…。

 逃げろって分かってるのに、体がついて来ない。

 心のどこかで諦めてる自分がいる。