「俺、どこ行っていいか分からなくて…。そこらへん歩いてたら、リツキって言う人に誘われて、暴走族に入れてもらったんです」
「暴走族…」
行く場所がなくて、最終手段だったのかもしれない。
保くんはでもと声を詰まらせる。
「でも、その場所、変で…。女の人とかたくさんいて…、明らかにおかしい人もたくさんいて…。俺怖くなって逃げ出したんです。でも、捕まって、ボコボコにされて、逃げないからもうやめてくれって、リツキって人に電話したら、その人たちどっか行ったんです」
直斗さんの話を思い出す。
紫炎の話…。紫炎も、保くんが踏み込んでしまった場所と似たような場所なのかもしれない。
「道で、気絶してて、起こされて起きたら、夏樹さんがいて…」
「え?」
「夏樹さんに言われて、ここに来たんです。秋奈さんなら、何とかしてくれるから、頼み込めって。夏樹さんにも置いてかれて、俺どうしていいか分からなくて…」
「ちょっと待って、夏がいたの!?じゃあ、保くんが入った場所って紫炎?」
大きく頷いた保くんはまた泣き出してしまう。
夏が、保くんをここに…。夏、なんで…。