「ッ帰る場所、ないんです」

「え?」

「だから、お願いします…」

 ど、どういうこと?

 土下座したまま頭を上げようとしない男の子に罪悪感が募っていく。

 なんで、罪悪感なんか…。

「とりあえず、座ってくれない?土下座されても、決まりは決まりだから」

「…」

 動かない。まさかいいって言うまでこのままなんじゃ…。まさか中学生の男の子がこんな必死に頼み込んでくる日が来るとは…。

「…キミ、名前は?」

「…保(まもる)です」

「保くん?名字は?」

「………」

「言いたくない?」

「……尾木、保…です」

 やっと口を開いた保くんは、怖がるように名字を言ってくれる。

 …あれ、尾木?…尾木って…。

「尾木くんの弟くん!?」

「…はい」

 思い出した。春ちゃんと亮祐くんと一緒にいた男の子だ。

 な、なんでこの子がここに…。それより、家がないって、どういうこと?