直斗さんの話はまだ続く。志季に留まったのは、夏がいたから。
恭也があんな血眼になるほど探し回ってる夏がどんなのか、知りたかったから。
はじめは、私をいいように動かしてるって思ってたみたいだけど、志季にいるうちにそれが違うことに気づいた。
「山下自身に恭也のことを教えたのは、あの万引きの後。探し回ってることを伝えたら、まぁそうだと思うって、笑ってましたけど。で、同時に言われたんすよ。秋奈さんを危険に巻き込む気はないから、絶対に言うなって」
「…」
「山下がいるのは十中八九、紫炎。そして、自分ではここへ戻って来れない」
「…なぜ」
独り言に口を挟むなとでもいうように少し睨まれて、また視線はそらされる。
「今度逃げれば、ここを潰す。とでも言われて脅されてんだろうな。それか、秋奈さんを人質に」
「…」
「…山下に言われただろ。探すなとか。…もうやめとけ。これ以上、山下の思いを踏みにじるな」
それは、警告。それ以上踏み込むなと言う意味。
それぐらいわかる。
だけど…。あんなにつらそうな夏を、放って、のうのうと暮らせって言うの?