たまり場には誰もいなくて、少し片づけられていたけど相変わらずごちゃごちゃだ。

「これは俺の独り言なんで、秋奈さんはたまたま、たまり場に来て聞いてしまったってことで」

「…分かった」

「独り言に返事なんかいらないんで」

 多分、記憶が戻ったからと言ってみんなが素直に全部を教えてくれないと思うから。

 直斗さんは多分、知ってることを全部話してくれる。そう、確信できる。

 直斗さんは、私から視線を逸らしたまま腕を組んで、たまり場の壁に背を預けた。

「…山下のことを知ったのは、1年前。俺が紫炎という暴走族に足を突っ込んだ時。そこの総長は山下夏樹の兄である恭也。突然行方をくらました弟を、血眼で探し回っていたから」

 紫炎…。暴走族って、本物の…だよね。

 みんな、夏樹のお兄さんを見て怖がってた。それほどに、強い人なんだ。

「当然、山下探しに俺も参加した。…だけど、紫炎がやばい族だって、気づくのも早かった。…薬やレイプが横行してた。副長のリツキって奴に薬を打たれかけて、ギリギリのとこで逃げだした。適当に歩いてる時にここに来ちまって、山下に沈められた」

 薬って、薬物ってことだよね。

 そんなに危ないところに夏がいるって言うの?