「夏樹」

 名前を呼ばれた直後に飛んできた薬は錠剤のもの。

 なんだよこれ。

「ご褒美。超強力な媚薬、とでも思ってよ」

「…いらねぇよ」

 薬を投げ返してソファーに寝ころぶ。

 つまんねぇのと呟いたリツキを無視して目を閉じる。

 逃げたいとか、そんなん関係なくもう染まり切った俺がここから逃げ出せるわけがねぇ。

 2年間、秋奈たちといたとしても、平気でこんなことをする本性は腐り切っちまってるんだ。

 …もう、2度と会えない。

 会っちゃいけないんだ。

 こんな、汚れきった俺が、秋奈に会う資格なんかねぇんだ。

 ごめん、秋奈。ごめんな…。

夏樹side END