「ねぇ、夏樹くん家はどこ?」
「…」
「言えない?」
こんだけよくしてもらったのに、言えなかった。
どうやって言っていいのかもわからない。
帰るとこがないのは事実だ。でも、それを言ったらなんでと言われるのが怖くて言えなかった。
「…なら、ここに住むか」
「ッ!?」
「あ、お父さん」
「ここ使ってないしな。古いがトイレも風呂もある。テレビもあるしな」
急に話に入って来たおじさんの言葉に思わず固まる。
なんで、そこまでしてくれるんだ?
それに、俺がここにいたら、迷惑をかけるかもしれないのに…。
「で、でも…俺なんかがいいんですか…」
「なんだ。お前は万引きでもするような奴なのか?」
「しないですけど…。でも」
「ならいいだろ。その代わり、店を手伝え。バイト代はやるから、月1万は、ここの光熱費と家賃、残りは好きに使えばいい」
おじさんの言葉にまた涙が浮かんで、それを無理矢理堪えて頭を下げる。