「夏樹」

「…ッ!?っひ…」

 閉じてたはずの襖が開いていて、兄貴がいた。

 真っ赤で、右手に光るものを持った兄貴が…。

 殺される…。

 勝手に頭は判断して、逃げろと命令してるはずなのに、体は全く動かない。

 光るものが迫ってくるのを見て、顔を逸らして強く目を閉じる。

 でも、左腕を掴まれて引き上げられる。

 目を開けると兄貴は俺なんか見てなかった。

「行くぞ」

「…え?」

「聞こえねぇのか!!」

「ッ…」

 必死に頷くと兄貴は廊下に視線を向けて、俺の腕を掴んだまま引っ張っていく。