「ッチ、おい、女。そいつに出させたら解放してやってもいい」
「は?」
「…」
「さっさとやれよ」
兄貴は、何言ってんだよ…。
女の子の視線が俺を捕える。その目はあまりにも必死で、立つのもつらいはずなのにその子は立ち上がって近づいてくる。
勝手に足が動いてその子と距離を取ろうと後ろへ下がる。
足に何か当たったと思う暇もなく、女の子が手を伸ばしてきたのをかわそうとして体が倒れる。ソファー…。
っはとした時には遅くて、女の子が乗って来て服に手をかけていく。
「っやめ…やめろ!」
嫌だ。俺は、俺は…。
抵抗しようともがいても女の子の力が想定外に強くて力負けする。
それでも押し返してなんとかどかそうとしても女の子の方も離れてくれない。
「お願いだから!」
悲痛な叫びに手が止まる。
…なんで、こんなこと…。女の子は泣きながら俺に触れる。
兄貴の言葉を信じて、ここから離れるために必死で…。
それが、さらなる絶望へ落ちるだけの通過点だというのに。
兄貴がそんな約束守るわけない。
滑稽だと笑うんだ。女の子を、女に抱かれる俺を…。
どうして、なんでこんなことするんだよ。
俺は、ただ…普通の、秋奈たちと一緒にいたいだけなのに…。