目を背けて、聞かないように耳を塞ぐ。

 下に行っても、ここにいてもどこに行ってもいかれた奴らしかいない。

 だから、何とかおとなしくなる時間までこうして耐えなきゃいけない。

 弱い自分を責めて、何もできない自分が汚くて、嫌いで…。

 何をされてるわけでもないのに、それが責められているように感じて、おかしくなりそうだった。

 だから、ひたすら目を逸らして、聞かないように耳を塞ぐ、それしかできないんだ…。

「夏樹、来い」

 気づいてたわけじゃねぇのかよ…。

 兄貴に突然呼ばれて恐る恐る顔を上げると、女の子はもうぐったりしていて、見ていられなかった。

 女の子を見ないようにして、兄貴に近づく。

「なに…」

「シラケた面してんじゃねぇ。溜まってんだろ、ヤれよ」

「は?」

 やるって…。この子を抱けって、そういう意味なのか…。

 首を横振って後ずさりする。冗談じゃない。絶対に嫌だ。

 俺は、俺はこれ以上、落ちたくなんかない…。