「夏、一緒に帰ろう?みんな、待ってるんだよ」

「…」

 急に黙り込んだ夏は抱き着いたまま離れない。

 壁も使って無理矢理座って、夏を抱きしめる。

 なんか、小さい子どもみたいだなぁ…。弱虫を隠して、強がって。でも、本当は寂しくて寂しくて仕方なくて…。

 お母さんと離れた子どもみたい。

「ねぇ、夏…」

「…無理だよ」

 いきなり低い声を出した夏はゆっくりと離れていく。

 その顔はまた仮面を被った強がりの顔。

「俺が戻ったら、今度こそ秋奈たちがどうなるかわかんねぇから…。だから、帰れない」

「…夏」

「…帰れ」

「夏、私は…」

「帰れって言ってんだろ!!」

 なら、なんで手を離さないの?なんで突き飛ばしたりしないの?

 夏…、本当は、一緒に帰りたいんだよね?

 ねぇ、夏…。