「その手、離せ」

「ッ…わったよ。ほらよ」

「ッ!?」

 手が離されたと思ったら背を押される。

 気づけば夏の腕の中に納まっていて、片手で抱きしめられる。

 男の人たちは舌打ちしながらどこかへ行ってしまう。倒れてた人は置き去りにして…。

 男の人たちを見送っていると、突然引っ張られる。

 背に軽い衝撃を受けて顔を上げると、夏の顔が目の前にあった。

 壁に背を預けた状態で、右手が顔の横に固定されてる。目の前には怖い顔をしたままの夏がいて…。

「なんで、ここにいる?」

「え…」

 あれ、声出た…。じゃなくて、なんでこの体制に…。

「昔何があったか忘れたわけ?ここはまじめちゃんが来るような場所じゃねぇ」

「な、夏…?」

「それともなんだ?遊びたいの?」

 妖艶に微笑んだ夏は、急に距離を詰めてくる。

 逃げ場なんかなくて、戸惑ってる間に口がふさがれる。