「あ、そうだ」

 思い出したように振り返った理紗を六花が睨む。

 だけど、理紗が見てるのは私だった。

「文化祭、邪魔しないでよね。永井くんと私、一緒に回るんだから」

 意味が分からない宣言をされて、理紗は言いたいことは言ったと言うように前を向く。

 別に、邪魔するつもりなんかないし。瞬がそうしたいならそうすればいい。

 私には理紗と瞬がどうなろうが関係ないんだから。

 …文化祭かぁ。机の上にあるひまわりに触れる。

 夏、どこにいるの?一緒に回りたかったなぁ…。

 お化け屋敷で、夏はきっと強がるの。でも、びっくりして悲鳴を上げて、笑っちゃうんだ。

 出し物で着る浴衣、また褒めてくれて、それで…。

 机の上に不意にできた水滴。瞬きをすると増えて、頬に触れると濡れてる。

 …なんで、泣いてるの。バカみたい…。

「秋奈?」

「…」

 バカ夏、なんで帰って来てくれないの?会いたいよ…。

 帰り道が分からないなら、迎えに行く。

 勝手にいなくなったこと、怒らないから…だから、帰って来てよ…。

 机に伏せて唇をかむ。

 ねぇ、どこにいるの?

 どこに行けば会えるの…?

 誰か、教えてよ。