「もう、秋奈すぐ考え込むんだから…」

 理紗はそう言いながら目の前にある段ボールを塗る。

 私もやらなきゃ…。持ってた刷毛をペンキに突っ込んでペタペタ塗り始める。

「でさ、言っといてくれる?」

「…?」

 何を…。理紗何か言ってったっけ…。

 首をかしげると、聞いてなかったの!?とため息をつかれる。

 そんなこと言われても、飛んでた時に何も覚えてないよ…。

 理紗はちゃんと聞いててねと念を押してきて、また手を動かす。

「永井くんにさ、一緒に回ってほしいって言ってほしいの」

 瞬?なんで…。同じクラスなんだから自分で言えばいいじゃん…。なんで私が…。

 理紗は少し顔を赤くさせてちらちら瞬の方を見てる。

「ね、秋奈いいでしょ?」

 首を横に振る。

 理紗は確かに友達だけど、そんなの自分で誘いに行ってほしい。最近瞬の機嫌悪いから、あんまり話しかけたくないし…。

「え、なんで?秋奈、永井くんのこと好きじゃないんでしょ?ならいいじゃん」

「…」

 
 そういうことじゃないもん。

 瞬なんでか知らないけど、理紗のことあんまりよく思ってないし、機嫌悪いところに吹っかけて怒られたくない…。