夏のこと、教えてほしい。

 2人に向かって言うと、瞬も六花も顔を見合わせてしまった。

 まだ、教えてくれないのかな…。

「…秋、お前どこまで思い出した?」

 さっき思い出したことと、私が階段から落っこちたまでで考えた成り行きを口パクで何となく伝えると、瞬はまた困った顔をする。

「顔、覚えてないんだよな。名前も」

 頷くと、瞬はますます困った顔をした。

 六花は、何かを一生懸命考えてるみたいだ。

「…秋奈、ケンカした相手が何を言ってたかは?」

「…」

 あの影の人の言ってたことだよね…。

 印象に残るようなことを言ってたのかな…。

 それは思い出せない。

 首を横に振ると、瞬と六花は悩むのをやめたみたいだ。

「それだけでもいい。思い出せるまで言えない」

「なんでケンカしたのか、しなきゃいけなかったのか。思い出せたら全部話す」

 結局、またわからずじまいか…。

 でも、話すって約束してくれた。それだけでも十分だ。

 頷くと、2人と一緒に1階に降りて、暑いから出ようとシャッターの方に向かう。

 だけど、何となく。何となく裏口の方が気になってドアに手を伸ばした。