夏の肩を掴んで揺さぶる。
視線が合わない。でも、表情は悲しそうな色を隠さない。
「秋奈」
揺さぶる私の肩を掴んで、夏は笑う。
そこには悲しさも後悔もなくて、ただただ楽しいことをした時のような笑顔だ。
「今までで何が1番幸せかって聞かれたら、秋奈と瞬桜に出会えたこと、この2年間だって堂々と言える。だから。…だからこそ、秋奈はここにいて」
「…え?」
「…今日はいなくならないから安心していいからな。戻ろうぜ」
「夏!」
掴んでいた手が離れて、外で行こうとする夏を慌てて呼び止める。
足を止めて振り返った夏はいつもの夏だった。
「…約束、なんかしない!夏がいなくなったらどこに行こうが探してやる!勝手にいなくなるなんて許さないんだから!!」
夏は驚くでもなくて、ただ困った顔を浮かべて無理矢理笑顔を作る。
そのまま何も言わず出て行った夏を追いかける気が出て来なくて、ただその場に立ちすくむことしかできなかった。