「すみません。あの、さっきカツアゲにあって、俺らを助けてくれた人がそいつらとケンカしてるかもしれないんですが」

 交番に着いて、事情を説明すると警察官は少しめんどくさそうな顔をして、どっちですかなんて言いながら2人ついて来てくれる。

 さっきの路地まで行って、逃げてきた道を警察官と一緒に進む。

 真っ暗な道。

 いつの間にか雪がうっすら積もってる。

 しばらく進んでいくと、鈍い音とうめき声が聞こえてくる。

 まさか、さっきの男の子の声じゃないよね…?

 瞬の手を強く握れば、握り返してくれる。その手に勇気をもらって、道を急ぐ。

「ッカハ…」

「うぅ…」

 この時の光景は、ずっと頭の隅にこびりついて離れない。

 雪がちらつき、地面にも少し積もった白い雪に飛び散った赤い跡。

 倒れた4人の男を真っ赤な手で下し、凍りつくような鋭い目で見下す夏樹の姿を、私はずっと忘れない…。

 男たちを見下していた男の子が私たちに視線を向ける。その目が殺気立っていて、思わず息を飲む。

 怖いって、思わなかった。なぜか、きれいだと思った。私はおかしいのかもしれない。

 だけど、私はこの時、夏樹のことが酷く美しくて、寂しそうだって思ったんだ。