「ねぇ、夏。私には、話せない?」

「…秋奈」

「夏なんか変だよ。怖い顔するし、ずっと何か考えてる。さっきだって、なんでいきなり志季の名前隠そうとしたの?」

「それは…」

 視線は合わない。

 夏は迷ってる。夏の視線は地面に向いていて、何だか表情も暗く見えた。

「…ねぇ、秋奈。約束してほしいことがある」

「ん?私にできることならしてもいいよ」

 夏は顔を上げて、苦笑する。

 どこか諦めたみたいで、嫌な笑顔だ。

「…もし、俺が突然いなくなっても探さないで」

「え?」

「絶対に、探したり、連れ戻そうとしないでほしい」

「…夏、どこか行っちゃうの?」

「…分からない。でも、多分」

「…夏は、夏はここにいたくないの!?」

 なんでいきなりそんなこと言うのか意味が分からない。

 分かりたくない。

 夏は友達で、これからも一緒に高校通ったり、ここでバカみたいに騒ぎながらここで笑うんだって思ってたのに。

 なんで、いなくなろうとしてるの…?