--さくらside--

「…っ、はぁはぁ。」


いったいどれくらい走ったのだろう。


涙が頬を伝うけど、そんなのどうだっていい。





本当はあの時、葵に手紙を見せようと思った。


わたしは葵が好きだから、この手紙見て嫌な気持ちになるの。やきもち妬いたの。葵はわたしの事どう思ってるの?

って言うつもりだった。


でも言えなかった。


葵の少し後ろの方でドアにもたれかかってわたしを睨みつける、忘れもしない女子数人がいたから。



ーーーーあれは忘れたくても忘れられない1年になって2ヶ月くらいたった頃…


入学して5日ほどでわたしは葵のことを好きな人たちの標的となった。


手紙はもちろん入れられたし、靴の中に画鋲も入れられた。

終いには、体育館に呼び出されて、水をかけられた。

この時は美香に助けられてなんとか収まったけど…

あの時は本当に怖くて怖くて、でも葵にだけは知られたくなくて美香に秘密にするように頼んだんだ。ーーーーーー




あの時の恐怖が少しよみがえった気がした。

数人のうち1人が1歩進んできたからわたしは慌てて葵に全てを押し付けた。

葵はまったく悪くないのに、心配してくれてたのに、葵に声を荒らげてしまった。


「…っもう、最悪だよ。。」

葵に嫌われたに違いない。

飽きられちゃったかな。