彼にとってそれは些細なことで本当にたいしたことではなかったのかもしれない。


だが、円香からしたら延々と続くかと思われたループを終わらせてくれたのだから感謝ものである。

今声をかけられなかったらあと十数分は悩み続けていたであろうことは確実だ。



「私、全然一人じゃ決められなくて…だから、その…」



この歳になってとよく友人からも言われる円香。それくらい彼女には決断力がかけている。

彼はそんな円香の背中を押してくれた言わば救世主。



「ほんっとーに、感謝してます!」



ありがとうございました!と伝えた声は思ったよりも大きく響き、近くにいた客や店員が訝しげに二人の方を見ていて。



(や、やってしまった…!)



明らかに注目を浴びていることに円香は顔から火が出るほど恥ずかしくなった。