「あ、あの…どこのどなたか存じませんが、ありがとうございます!」



しかし出会ったばかりの相手にその理由を聞けるはずもない。

そんな礼儀知らずではないし、なにしろ同じ学校の制服を着ているとはいえ相手はもう二度と話すこともないかもしれない相手。


とりあえずお礼だけは、と円香は頭を下げる。


すると目の前の男は一瞬驚いたような顔をしたがすぐにクスクスと笑った。

何故笑われているのかわからない円香はコテンと首をかしげる。



「いーえ。お礼を言われるようなほどのことじゃないしね」



そう言ってにこりと寂しさを隠すような作ったような笑顔でいちごオレを手に取る彼。

そんな彼に円香は再び勢いよく頭を下げた。



「いやいや!!何をおっしゃいますか!!」