そういえばそんな現場を目の当たりにして以来、彼女とは仲がいいのだと思い出した円香。

一人そう納得した円香はまた何事もなかったかのように視線を窓の外に移す。そしてその先のその人を眺めた。


あのカフェオレの彼を。


聞こえてきた仁菜の二度目の溜め息は知らぬ振りをすることに決めたらしい。



(あ…女の人と腕組んだ。しかも両方の手に違う人)



恐らく同級生であろう女の腕が、まるで蛇のように彼の腕に絡み付いている。

するりするりと、逃がさないと言わんばかりのそれ。


そんな光景を見ながら両手に花ってこういうことを言うのかなと妙に感心している円香。

横からはあれは両手に毒蛇だと仁菜が毒づく。


それに思わず笑いながらそれでもチクリと胸の奥が痛むのは、きっとあの日彼に心を奪われたからだろう。