学校からの帰り道、大通りから一本外れた所にあるカフェ、あまり繁盛はしていない様に見える。しかし、ひっそりとした隠れ家的な雰囲気とマスターの淹れるコーヒーは絶品だ、それに女性スタッフの制服が可愛い、勇も定期的な常連になっている。
カランとレトロな扉鐘を鳴らし店内に入るとテーブル席で食事をしている体格のいい客と一瞬だけ目が合ったが、そこから一番遠いカウンター席に勇は座った。マスターが正面で迎えてくれる。
「いらっしゃい、いつもので良いかな?」
勇は足元へ鞄を置き返事をする。
「はい、お願いします」
そして、続けて小声でマスターへ尋ねる。
「あのテーブル席の人って最近来てるんですか?」
カウンター越しで始めた作業の手を止めずマスターは話す。
「いいや、一見さんだね。どうかしたのかい?」

「学校で見た事があるので気になっただけです」

「ああ、確かに勇くんと同じ制服だね」

…マスターには悟られない様に勇は話を流すが

“あいつ絶対に隣のクラスの扶川だよなぁ…たしかムエタイやってるんだっけか?喧嘩ばっかりしてるって噂だし…関わりたくない”

思い出したかの様にマスターが話す
「そういえば、最近アルバイトの子が入ったんだけど、その子も同じ制服だね…そろそろ買い出しから帰って来る頃だよ」