「…いいですか?先生」


私は、落ちた参考書からゆっくりと先生へ視線を移すと、


私の心の中をそのまま映した瞳で彼を睨みつける。



「あなたが何を考え、何を望んでいるのかなんて分かりませんし、分かりたくもありませんが、私はあなたのお遊びに付き合っているほど暇ではありません。
そもそも、あなたのしている“この行為”は一歩間違えれば犯罪です。私の匙(さじ)加減で、あなたをこの学校から追い出す事だって可能なんですよ?それでも一応教師なんですから、少しは考え、節度のある行動を心掛けてはいかがですか?」



早口でそう捲し立ててから、「それと!」と付け加えて彼を押し退ける。


そして、彼が先ほどまでいた場所に行き、そこに落ちていた吸殻を拾い上げる。


「校内は、喫煙禁止。吸殻はお持ち帰りください」



それだけ言い捨てると、私は彼の手に吸殻を強引に押し付け、ツカツカと彼の横を通り過ぎ屋上を後にした。






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「…ふ。これは手強そうだな」



手の中の吸殻を眺めながら、彼が何やら不敵な笑みで、そう呟いているとは知らずに。