背後から私の体に覆い被さるように、私が開けようとしていたドアを押さえる不良教師。



夏の強い日差しが遮られ、私の体に影がかかる。



ゆっくりと振り返り怪訝な顔で見上げれば、冷たい表情で私を見下ろす、物凄く整った顔。



キリッとした二重瞼に、高く綺麗な形の鼻。


薄く血色の良い唇は、どこか艶やかさも秘めていて…



–––確かに。


世の女子達がこの顔を見て、騒ぐ気持ちも分からなくはない。



が!


んが!!



––––––––––パシ。




「先生。顔が無駄に近すぎます。」




「……お前ねぇ…」



両手で前に突き出した参考書から、先生の青筋立った顔が覗く。


ヒクヒクと口角が引きつっている。


「参考書ってのは、人の顔押し退ける為にあるんじゃねぇんだよっ」



思いきりそれを払われ、


私の手から、無残な姿で地面に叩きつけられる参考書という名の私の相棒。



その相棒の姿を見て、私の心の中で怒りのゴングが響き渡った。