ハンドタオルごと手を握った。

先輩は驚くでもなく、私の指先を反対の手で包み返してくれる。


ほっこりとするような温かさが感じられる。
この手の温もりで包まれたら、他はもう何も要らないかもしれない。


助けて欲しい。先輩に。
救世主であって欲しいと願ってる。先輩が。




けど………



「今のは…たまたまです。昨夜は部屋が暑くて寝苦しくて…あまり深く眠れなかったから悪い夢を見て……」


両手で包まれていた手をするりと抜いて謝った。


「すみません。下らないことで気を使わせました……」


先輩には彼女だっているし、仕事だってあるのに抜けさせてしまってる。

連日の残業もさせているし、これ以上のことを望んだりしてはいけない。


私の運命に先輩は巻き込まれるべき人じゃない。

自分の人生をらしく謳歌してもらわないと。


「私なら大丈夫ですから仕事に戻って下さい。もう少し休んでも頭がフラつくようなら早退します。その時はまた言って帰りますから」


お願いだからもう側にいないで。

いずれは死に飲み込まれるかもしれない私をどうか一人にして欲しい。


「本当に大丈夫なんだな?」


年押しさせられる。


「はい。大丈夫です」


わざと目を見て答えた。


「そうか。じゃあゆっくりしてろ。無理して仕事しようと思うな」


期待されてもないようだ。