(まさか、先輩が私の強い味方?)


そんな風に思えてしまっても仕方ない。
先輩くらい個性が強くてマイペースな人なら私の運命も変えてしまえそうな気もする。

けれど、やっぱりそれはあり得ない。


頭の中にロングヘアの汐見先輩が浮かんでくる。
美人でスタイルも良くて青空先輩とは明らかにお似合いの女性。
私とは違って仕事もできるし、先輩に限らず他の誰からも頼りにされている人。

何もかもが私とは正反対。
そんな人が側にいる男が、私の救世主であろう筈がない。


烏滸がましい想像は虚しくなるだけ。
考えて落ち込む前に止めてしまう方がいい。


「落ち込むなんて……それすらも間違ってる」


私は先輩のことが好きな訳じゃない。
ただ、数年ぶりに男性と触れ合ったからときめいただけだ。

これは運命なんかじゃない。
ただの偶然が重なっただけ。


「運命なんて言葉、大キライ!」


私に死期が迫ってるんだとしたら、考えたり悩んだりする隙なんて与えて欲しくない。

下手に誰かに助けられたりしたら、返って救って欲しいと願いたくなる。


そしてまた拒否される。

あの時のように、悔しくて悲しい思いをするのは二度とごめんだ。



(忘れよう。今日のこともあの日のことも)


どうせ私は仕事もできない脳みその持ち主なんだから忘れるのは簡単。

毎日毎日思い出さないようにすればいい。

そしたらきっと直ぐに忘れられる。