『やっぱり先輩が救世主なのかもしれない』


家に帰り着き、キーワードのような呟きを送ると空かさず返事が届いた。


『どういうこと?』


何も教えていない智花にこれまでのことを説明するべきかどうか悩んだ。



『ううん、多分気のせいだからいい』


少し悩んだ結果、やっぱり言わないでおこうと決めた。
説明したところで先輩は私のことを好きになったりはしない。第一、汐見先輩という紛れもない彼女がいる。

そんな人を救世主だと思い込んで好きになったりするのも変だし、無能な女は嫌いだと既に言い渡されてる。

だから、何があっても振り向かれたりしない。

振り向かない相手だと知っておきながら、片思いをするほど愚かじゃないし、そもそも時間だって限られてる。

私には死期が近づいてる。だから、悠長な恋なんてしてられない。

何処かにいるかもしれない強い味方を見つけ出して、1日も早く結婚しないといけない。

さもないと、手遅れになってしまう。

こうしている間にも、死は確実に私を飲み込もうとしているんだから。



(でも………)


ぎゅっと掴まれた二の腕に掌の感触はハッキリと残っていて、なかなか体から離れていってくれない。

引き寄せられた時に感じた胸のときめきは、あの夜と同じように今も居座り続けてる。

二度ならず三度までも助けられるとは思わなかった。

これが偶然でないとしたら運命ということになるんだろうか。