「はい、あれからはありません。あの日はきっと厄日だったんでしょうね」
ご心配なく…と言うつもりでいたのに、いきなり二の腕を引っ張って引き寄せられた。
(えっ!?)
何が起きたか分からずボー然と胸の中に収まる。
目をパチパチさせていると、頭の上から怒鳴る先輩の声がして。
「こらっ!こんな所でキャッチボールなんてするな!」
(えっ!?ボール!?)
顔を上げると先輩の顎のラインが見えた。その向こう側から何かを放り投げる腕が見える。
「すみませーん!」
後ろから声がして振り返ると、スポーツウエアを着た人達がテニスラケットを片手に立っている。
その手元には蛍光色をした黄色のボールが光り、ペコペコとお辞儀を繰り返していた。
「全く、顔は大人なのにやることはてんでガキと同じだな」
呆れる人の声に何があったのかと聞いた。
「お前の後頭部に向かってテニスボールが飛んできたから避けさせたんだ」
答えるが早いか、既に腕は解放されている。
「後頭部にボール?」
またしてもこんな偶然!?
そんなことってあるの!?
「じゃあな、注意しながら帰れよ」
手を振り上げた先輩の背中を見送った。
少し進むと汐見先輩が声をかけてきて、二人で何やら楽しそうに話をしている。
ズキン、と胸に痛みを感じた。
掴まれていた腕に残っている力強さと三度目の危険が重なっていく。
(もしかしたら……やっぱり先輩が………?)
ドキンドキン……と鳴り響く心音は体の奥から聞こえ始め、歩き出そうとする足さえもくい止めようとする。
でも、このまま二人のことを見続ける勇気もなく、私は靴底を引き摺るようにして歩き出した。
ご心配なく…と言うつもりでいたのに、いきなり二の腕を引っ張って引き寄せられた。
(えっ!?)
何が起きたか分からずボー然と胸の中に収まる。
目をパチパチさせていると、頭の上から怒鳴る先輩の声がして。
「こらっ!こんな所でキャッチボールなんてするな!」
(えっ!?ボール!?)
顔を上げると先輩の顎のラインが見えた。その向こう側から何かを放り投げる腕が見える。
「すみませーん!」
後ろから声がして振り返ると、スポーツウエアを着た人達がテニスラケットを片手に立っている。
その手元には蛍光色をした黄色のボールが光り、ペコペコとお辞儀を繰り返していた。
「全く、顔は大人なのにやることはてんでガキと同じだな」
呆れる人の声に何があったのかと聞いた。
「お前の後頭部に向かってテニスボールが飛んできたから避けさせたんだ」
答えるが早いか、既に腕は解放されている。
「後頭部にボール?」
またしてもこんな偶然!?
そんなことってあるの!?
「じゃあな、注意しながら帰れよ」
手を振り上げた先輩の背中を見送った。
少し進むと汐見先輩が声をかけてきて、二人で何やら楽しそうに話をしている。
ズキン、と胸に痛みを感じた。
掴まれていた腕に残っている力強さと三度目の危険が重なっていく。
(もしかしたら……やっぱり先輩が………?)
ドキンドキン……と鳴り響く心音は体の奥から聞こえ始め、歩き出そうとする足さえもくい止めようとする。
でも、このまま二人のことを見続ける勇気もなく、私は靴底を引き摺るようにして歩き出した。