「漬物が好きな草食系かと思えば肉好き。若山は極端から極端に走るタイプだな」


料理一つで性格まで言い当てられた。


「そう言う先輩は人のことなんてあまり考えないタイプですよね」


何でもかんでもマイペース。だから私の嫌いな物も平気で手渡す。


「バレたか。俺は何より自分が一番可愛い人間なんだ」


そんな人が私の指導役を仰せつかるなんて、「全くもって不幸だ」と嘆いた。


「大丈夫ですよ。いずれその役目からも解放されます」


私には死期が近づいてるんだから嘆かなくてもいいって意味で言った。


「まあそれもそうだな」


先輩は別の意味で答えたんだけど、この時は自分と同じ意味で言ったのだろうと思い込み………


「幾らその予定だからって認め過ぎです!」


……と、つい怒ってしまった。



打ち上げは2時間程度でお開きになった。
翌日も仕事があるからというので二次会もなく、各自がバラバラと帰路につき始める。



「若山」


後ろから呼び止められた。


「何ですか?青空先輩」


珍しく「バカ山」と呼ばれなかった。
そう言えば、今日は店内でも呼ばれなかったような気がする。

帰ろうとしていたのをやめて立ち止まった。
先輩の背後から視線を送る汐見先輩の姿が見えて、どくっと胸が震えた。


「お前、あれから危ない目には遭ってないのか?」


牛丼屋以来の外食で、あの日のことを思い出したようだ。