「まさかな」

ある考えが頭をよぎり、すぐに掻き消す。

確かにあからさまなまでの嫌悪感と敵愾心を露わにしていたが、あの男が…一国の大統領が戦場に立ち、傭兵チームと行動を共にするような無謀な真似をする筈がない。

まさかあのニコライ・ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ自らが、テロリスト討伐の為に作戦行動に参加する筈がない。

如何に家族を殺されたとはいえ、自らも拉致されて殺されかけているのだ。

今頃は恐れをなし、ようやく保護されて、命を失わずに済んで震え上がっている所だろう。

挑発的な発言を繰り返して、自らがテロリストの標的とされ、殺されかけた事を心の底から後悔しているに違いない。