「だからこそだ」

ニコライは真っ直ぐにバニングを見た。

「国民からの信頼がある。だからこそロシアの先頭に立つ私が、テロリストに屈服するという姿を見せてはならない」

表情こそ変わらない。

しかしニコライの奥歯を噛み締める音が、バニング達にも聞こえた。

「テロリストは便所に追い詰めて肥溜めにぶち込んでやる」

冷徹な紳士から、そんな粗野で野蛮な台詞が紡ぎ出された。

涼しげな顔をして激情家。

激しく燃え盛る復讐の炎は、永久凍土をも溶かして尚焼き尽くすほどだった。