四駆を数時間走らせる。

モスクワから離れると、広大な平原が広がる。

まるで未開の土地のようだ。

ロシアの面積は日本の約45倍、アメリカの約1.7倍にも達し、南米大陸全体の大きさに匹敵するというのだから、発達した都市もあれば、こんな大自然が残っているのも頷ける。

こんな広い国土を取り仕切っているというのだから、大した大統領だ。

その大統領が拉致されてから、既に半日が経過しようとしている。

いまだ犯行声明も出ておらず、テロリストの目的は不明のまま。

「或いは目的はもう果たしたのかもしれないな」

「どういう事?」

バニングの言葉にハルが問い掛ける。

「獄中の仲間の釈放や身代金が目的ではなく、はじめから大統領の命そのものが目的という事さ」

バニングは前を真っ直ぐ見たまま言った。