お父さんとお母さんの出会いは、友達の紹介だった。

 お父さんの仕事の同僚の(間下啓介さん)の家の、隣の家に住んでいたのが母。
間下さんと母は幼馴染み。

 父が何度か間下さんの家に遊びに行くうちに、母とも良くなり、一緒に遊ぶようになる。

 母の友達の(中山涼子さん)も加わり、グループ交際がスタートする。

 間下さんは、お洒落でテキパキとした涼子さんに、直ぐに惚れてしまったらしい。

 二人の仲を取り持つように、父と母は、間下さんに協力する。

 そんな中で父も母を好きになり、母も父を好きになった。

 間下さんも涼子さんと付き合うようになり、うちの両親とほぼ同時くらいに結婚をしたらしい。

 今でも、間下夫婦とうちの両親は仲が良い。

 間下さん夫婦は子供に恵まれなかった。

 小さな頃から、お姉ちゃんや私に優しくしてくれた、間下夫婦。


 間下夫婦は、年に一度は海外旅行に行き、お土産を持って我が家に訪れたりする。

 父や母は知らない国の話を聞いて、
『いつか行きましょうね』と母は父に言う。

 父が定年を迎えたら、間下夫婦のように旅行するのが夢らしい。

 母は私に言う。

 「涼子に沢山海外の話を聞いたから、お父さんが定年して、華がお嫁に行ったら、第2の夫婦生活を始めるの。

 まずはイタリアかしら……
知ってる?
イタリアに旅行に行くと、才能が開けるらしいわ。
ワイドショーの占いでやっていたの。
日本から見たイタリアの方角はいいらしいのよ。

 お母さんにはどんな才能があるかな?

 私がやってきた事は、あんたたちの子育てくらいだしね……

 子供の居ない涼子には羨ましがられるの。
『子供が居たら違うんだろうなー』なんてね。

 ないものねだりね。

 ずっと、好きなインテリアの仕事をして、売り場のチーフにもなって、出世もしたし、カッコイイ、キャリアウーマンよね。

 お母さんは、涼子の人生も十分幸せだと思うわ…

 子育てしない分、自分の時間や自分に掛けるお金もあっただろうし、同い年なのに若々しいもの。

 あっ、でも、お母さんの方が幸せかな?
お父さんの定年後には、涼子のしてきた事も手に入れられる。もうすぐだもんね!」


 なんて、笑いながら話す母。