「華、あの時、ノート有り難うな!
 すげぇー助かったよ!

 勉強なんて、やる気もしなかったけど、華のノート見ていたらさ……
 このまんまじゃいけない。
悲しみに慕うより、現実って思えたよ」

 「あんな事くらいしか思い浮かばなかった。
掛ける言葉が見つからなかったから…」

 「さすがに、可哀想なんて思われたくないさ。
 そんな時でも、同情されたくない男のプライドくらいは持ちたい」

 「うん。
私もアキならそう思うかもしれない」


 「だろ?

 話の続きになるけど、そのご主人がね、あなたの言う事は分かりました。

 保険に興味なかったし、ただ入っていればいいくらいにしか思わなかった。

 小さな頃から母が掛けてくれたものを変える気もなかった。

 ただ、妻に遺してやれるもんがないのも、夫として申し訳ない。

 牧瀬さん、夫として責任を果たせるものにして下さいって言ってくれたんだ。

 やぁー嬉しかったなー

 人の心が動く瞬間を、目の前で見れるってさ。


 上司が言うんだ。

 営業は自分の成績を気にしてするもんじゃないって。

 相手の気持ちに寄り添って、あなたの為にって気持ちが、人の心を動かすもんだって。

 まさにね、その通りだって思う。

 この仕事を選んで良かったって思える瞬間。

 それでもさ、成績はついて回るからね、綺麗事ばかりも言ってらんないけど……

 辛くて、苦しいもあるけど、上手くいった時は格別な気持ちを味わえる仕事なんだ。


 あっ、ごめんな!
仕事の話ばかりで……

 退屈させただろ?
だから、これでおしまい。

 美味いもん食べて、飲もう!」


 アキ、あなたの嬉しそうな笑顔が、何よりのご馳走なんだよ!

 言わないけどね…