ーー振り向いた視線の先に誠治さんが居たーー

 息を切らして走ってきてくれた。

 「華ちゃん、
歩くの早いよ‥‥‥ハァハァ」

 「黒崎さん‥‥」

 その時は誠治さんを苗字で呼んでいた。


 「ごめんね。
嫌な思いしたんじゃないかって?
 沢口さー
時々、KYなとこあるんだよね。
悪気ないんだけどさ…」

 「いえ‥‥
私こそ雰囲気壊してごめんなさい」

 「いやいや‥‥
沢口もあれから反省してたし、バカだなって思って、許してあげてくれないかな?」

 「いえ‥‥‥
私の方が大人げないです。
 笑って許すとこですよね…」

 「いや、
気に入らないなら、はっきり気に入らないって言うべき!
そうしないと図に乗るだろ?
沢口にはいい薬だよ」

 誠治さんは笑うけど、私は溢れてくる涙が止まらない。