親父に無駄に歯向かわない俺でも、我慢の糸は、ある日プツリと切れた事があった。


 中学野球最期の試合となる、県大会予選。

 俺は四番のピッチャーというポジション。

 嫌な事も多かった俺の日常で、野球をする事が唯一の生き甲斐だった。

 だけど、予選の2回戦であっさり負けて、俺の中学野球の歴史は幕を閉じた。

 あいつに言われるまでは、悔しいけど後悔はなかった。

 出来れば、高校に入学したら、甲子園を目指して、また野球に打ち込みたかった。


 ーー試合に負けて帰った日ーー

 しょんぼりしながらも、笑顔を作って、負けた事を話した。

 親父も珍しく早く帰っていた。

 食卓で酒を煽り、母さん相手にいつもの様に、会社の愚痴をこぼしていた。

 弟の柊は、その雰囲気もすっかり慣れてしまっていて、先に冷やし中華を母さんの横で食べていた。


 「お帰り、晶。
三年間お疲れ様ね!
今日は暑かったね……
冷やし中華作ったよ。
良くやったよ!
晶の泥だらけのユニホーム、面倒だったけど、もう、洗えないの寂しいな…」


 俺を慰めようとして、敢えて優しい言葉を掛ける母さんに相反して、親父の口から出た言葉は‥‥‥