「っおい!!」

「北野の妹だよな?」

「なんだよ、この紙は………」

「姉妹揃って、自殺する気?」

「えっ、北野先輩が
死んだ理由って………」



ヒラヒラと宙を舞い落ちていく紙。


ゴロゴロと雷が鳴っていた。


大々的に書いた名前は、
安奈を辱しめた奴等の名前だ。


屋上のフェンスを越えて
そこへ立つ安寿に迷いは無かった。


愛する姉が死んだのは
クラスメートに乱暴されたからだ。

警察は安寿の訴えを調べもせず。
自殺で片付けた。

知っていながら、教員は動かず。
学校の世間体を一番に考え、
無かった事にした。



遠くでサイレンが
近付いて来るのが分かる。


思惑通りになり、
安寿はほくそ笑んだ。



下で口々に聞こえる声。
だけど、止めるつもりはない。


姉を辱しめた人間も、教員も。
勿論、警察だって許す気はない。


バンッと、音が聞こえて
バタバタと屋上に
人が来たのが分かった。


丁度その時、警察のパトカーが到着して
待った甲斐があったと、
安寿はゆっくりと上を見上げる。


確か安奈が死んだのも雨の日。
丁度安奈が屋上から落ちた瞬間に
雷が落ちたのだ。


その時の状況と全く同じ。
この空を少しだけ嬉しく思う。


「北野さんッ!!」


振り返った安寿。
その時、雨がパラパラと降り始めた。


教員が10人。
そして、その中に安奈の担任も見える。