「本当に綺麗な髪をしているね?安奈は」

一束髪を持つと、
アランは目を細めて言う。


自殺する前は、
真っ黒な腰までの髪と瞳だった筈なのに。


安奈はアランと同じく、
金髪にブルーの瞳に変わっていた。


「安寿の方が綺麗だったわ。
容姿も………髪も。」


ふと、妹を思い浮かべる。


可愛いと言われる安奈とは違い
二歳年下の安寿は美人だと
言われる事が多かった。


小さめの胸、小さめの身長。
そんな安奈と違い安寿は
スタイルの良い体。
妖艶な瞳、唇。


よく姉と妹を間違われた。


「僕は安奈の事を言ってるんだよ?」

そっと髪に口付けられ、頬が熱くなる。


「言い伝え通りの可憐な
僕のフィアンセだ………」


ゆっくりと頬を撫でられる。




そう、この世界の言い伝え。
だから、異世界からの来訪者があるのは
この国の人間ならば誰しも知っていた。



だからこそ、安奈は城に
住まわせてもらえるのだ。



ただ、危険を予測し
外出はさせてもらえていなかった。



そして、やっと念願の外出が
今日叶ったという訳だ。